エンジンルームは雨で濡れても大丈夫?水が溜まる要注意ポイントと雨の後のかかりにくさの切り分け

雨の日の自動車と、点検する整備士のイラスト 気になる点・注意点

雨上がりにボンネットを開けたら、エンジンの上に水滴、フロントガラスの下には水たまり。「これ、壊れないのか?」と不安になって検索した方も多いと思います。私も中古スポーツカーをいじり始めた頃、雨の翌朝に同じ光景を見て、しばらくエンジンをかけるのをためらいました。

結論から言うと、普段の雨や走行中の水しぶきでエンジンルームが濡れる程度は、基本的に想定内で心配いりません。エンジンルームは水をかぶる前提で、ある程度の防水が施されています。ただし、排水口の詰まりで水が溜まり続ける・吸気口やプラグホールに水が入る・高圧洗浄機で上から水を当てる、の 3 つは話が別です。雨はボンネットが受け止めてくれるので、エンジンに上から直接水がかかることはあまり想定されておらず、下から跳ねる水には強くても、上からの水には弱い部分があるからです。

この記事では、本業が工場の設備保全エンジニアで、週末は自宅ガレージで車をいじっている私が、「放っておいていい濡れ方」と「点検すべき濡れ方」の見分け方を整理します。なお、冠水路を走った・車が水に浸かった、というケースはこの記事の範囲外なので、途中で専用の記事に案内します。

エンジンルームは雨で濡れても大丈夫?雨や水しぶきは想定内の設計

DIY初心者くん
DIY初心者くん

雨の日にエンジンルームへ水が入るのって、普通なんですか?

タクミ
タクミ

結論から言うと普通です。エンジンルームは水をかぶる前提で、ある程度の防水がしてあるんですよ。ただ、上から大量にかかる水は苦手です。

DIY初心者くん
DIY初心者くん

えっ、苦手な水もあるんですか。正直、それが一番不安です…

タクミ
タクミ

そうですよね。どこが苦手なのかを知っておけば、慌てずに済みます。設計の考え方から順に見ていきましょう。

まず「雨でエンジンルームが濡れても大丈夫?」という疑問への答えです。自動車ジャーナリストの解説では、クルマは構造上、下から水が跳ね上がってもある程度は平気な設計で、エンジンルームのように水をかぶる可能性がある場所にはある程度の防水加工が施されている、とされています。整備業界向けの解説でも、現代のエンジンルームは雨水の侵入をある程度想定した防滴構造だと書かれています。

設備保全の仕事をしていると、「水がかかる前提の場所」と「かからない前提の場所」で部品の作りがまるで違うのを日々見ます。エンジンルームの配線のつなぎ目(コネクタ)を外してみると、ゴムのシールが付いたものが多いのはそのためです。

裏付けとして分かりやすいのが、国土交通省に届け出られたリコールです。たとえば、O2センサ(排気中の酸素量を測るセンサー)のコネクタの防水構造が不適切で、雨天走行などでコネクタに溜まった水がエンジン停止後に内部へ吸い込まれ、端子が短絡して警告灯が点く——という不具合は、防水カバーを追加する形で改善されています。雨で濡れること自体は織り込み済みで、防水が足りなかった場合は「不具合」として直される、という関係です。

一方で、雨の日にエンジンルームへ水が入るといっても、雨と「水に浸かる」はまったく別の話です。冠水した道を走った、駐車場で車が水に浸かった、という場合は、ここから先の内容ではなく、浸水レベルごとの判断を書いた次の記事を先に読んでください。

ハイブリッド車のエンジンルームが浸水したら?冠水後にやってはいけないことを設備保全のプロが解説関連記事ハイブリッド車のエンジンルームが浸水したら?冠水後にやってはいけないことを設備保全のプロが解説豪雨や冠水路でハイブリッド車のエンジンルームに水が入ったとき、Ready ON にしない・オレンジ色のケーブルに触れないが最優先です。浸水レベル別の判断と、オーナーができる正しい保…

心配すべきケース①カウルトップの詰まりと水たまり

DIY初心者くん
DIY初心者くん

フロントガラスの下に水たまりができてたんですけど、あれは雨漏りですか?

タクミ
タクミ

多くは排水口の詰まりです。フロントガラスの付け根には、雨水を外へ逃がす通り道があるんですよ。

DIY初心者くん
DIY初心者くん

通り道が詰まると、水はどこに行っちゃうんですか?

タクミ
タクミ

行き場を失って、車内や空調側に回ることがあります。私も落ち葉で詰まらせたことがあるので、その話も交えて説明しますね。

「ボンネットを開けたら雨の水たまりがある、エンジンは大丈夫?」と心配になる場所の多くは、フロントガラスの付け根にある格子状の部品、カウルトップの周りです。ここには雨水を車外へ逃がす排水口と、エアコンが外気を取り込む吸気口があります。

エンジンルームの雨漏り原因として一番身近なのが、この排水口の詰まりです。落ち葉で排水口がふさがると、行き場を失った水が車内に入り、足元にある ECU(エンジンなどを制御するコンピューター)を濡らして故障につながることがある、と解説されています。

私の失敗談です。秋に何度か雨が降った後、ボンネットを開けたら、カウルの下の隅に落ち葉と泥が溜まって、水が引かずに残っていました。指で落ち葉をかき出したら、溜まっていた水がすっと抜けていきました。それまで「雨の後にボンネットを開けると、いつもここに水が残っている」のを車の癖だと思い込んでいたのが反省点です。

排水の作りが不十分だと実害が出ることは、リコールでも確認できます。

  • ブレーキのリザーバータンク上にあるカウルカバーの排水設計が不適切で、雨水がブレーキフルードに入るおそれがあった例
  • 外気導入口の防水カバーの取付けが不適切で、空調のブロアモーター(送風機)に雨水が入り、腐食から最悪火災に至るおそれがあった例

どちらもメーカー側の構造不具合で、すべての車に起きることではありません。ただ、雨水を逃がす通り道が機能しないと、雨は「想定内の水」から「溜まる水」に変わる、という点は共通しています。だからこそ、オーナー側でできる一番の対策は、排水口を詰まらせないことです。

心配すべきケース②エアクリーナーとプラグホールへの浸水

DIY初心者くん
DIY初心者くん

エンジンルームに水が入ったら、エンジンの中まで水が行くんですか?

タクミ
タクミ

普通の雨ならまず行きません。気にすべきは空気の吸い込み口と、プラグの穴の 2 か所なんですよ。

DIY初心者くん
DIY初心者くん

プラグの穴って、どこにあるんですか?

タクミ
タクミ

エンジンの上面、点火コイルが刺さっている穴です。水が溜まると火花が逃げます。順番に説明しますね。

「エンジンルームに水が入った」と聞いて一番怖いのは、エンジンの中まで水が行くことだと思います。経路として気にすべきなのは 2 つです。

1. エアクリーナー(吸気口)からの浸水

エンジンは空気を吸い込んで燃料を燃やすので、吸い込み口から水を吸うのが最悪のパターンです。国交省のリコールには、トラックの吸気ダクトの吸入口の遮水性能が足りず、水たまり路や冠水路を走ると吸入口から水が入り、最悪の場合エンジンが止まるおそれがあった例があります。ここで問題になっているのは水たまり・冠水路を走ったときで、空から降る雨ではない点に注目してください。

2. プラグホールへの浸水

最近のエンジンは、エンジン上面の穴(プラグホール)に点火コイルが直接刺さっています。整備業界向けの解説によると、高圧の水が防水ゴムの隙間を突破してプラグホールに溜まると、高電圧がプラグではなく水を伝ってエンジン本体へ逃げ、特定の気筒で失火(ミスファイア)が起きるそうです。プラグキャップ周りに水分が付くと電流がリークして失火し、最悪は始動不能になるおそれがあったリコールや、洗車の水がプラグホールに入ってプラグが急冷され割れるおそれがあったリコールもあります。

まれな例として、ハイブリッド車でカウルルーバ(フロントガラス下の樹脂カバー)の防水が不十分だったため、集中豪雨など多量の雨水がかかると水がエンジン上部に垂れ、インジェクター取付け部から燃焼室に入るおそれがあったリコールもあります。これは特定車種の構造不具合で、対策としてシール材や防水カバーが追加されています。普通の車で普通の雨なら、ここまで心配する必要はないと私は考えています。

雨の後にエンジンがかかりにくい時の切り分け

DIY初心者くん
DIY初心者くん

雨の後にエンジンのかかりが悪かったんです。水が入ったせいですか?

タクミ
タクミ

可能性の一つですが、決めつけは禁物です。雨の日は、水とは関係ない「プラグかぶり」も起きやすいんですよ。

DIY初心者くん
DIY初心者くん

えっ、水のせいじゃないこともあるんですか。

タクミ
タクミ

そうなんです。どこを通ったか、どんな症状かで見当をつけられます。切り分けの順番を表にしました。

雨の後にエンジンがかかりにくい、と感じたときは、次の順で考えると整理しやすいです。

状況・症状 考えられること 対応
水たまり・冠水路を通った後に不調 吸気口から水を吸った可能性 何度も始動を試さず整備工場へ
かかった後もエンジンがブルブル震える、警告灯が点く プラグホールやコネクタへの浸水による失火・短絡 整備工場で点検
かかりが悪いが、かかれば普通に回る 湿気の多い日に多いプラグかぶり 始動後すぐにエンジンを切らない

プラグかぶりは、始動時の混合気が燃え切らずにプラグが燃料で濡れ、火花が飛ばなくなる状態です。JAF の会報誌では、湿度が高い雨の日に多い現象で、エンジンをかけてすぐ切ると起きやすいと紹介されています。「濡れている」といっても水ではなく燃料なので、水が入ったと早合点しないことが大事です。

私も、昔乗っていた古い車で雨の翌朝にかかりが悪く、アイドリングが一瞬ばらついたことがあります。そのときは、エンジンが冷えている状態でプラグコード周りの湿り気を拭いて乾かしたら落ち着きました。ただ、原因が湿気だったのか別の要因だったのかは、今でも断定できていません。かからないからといってセルを回し続けるのはやめましょう。バッテリーを消耗させるだけでなく、水を吸っている場合は傷口を広げかねません。

水たまりを勢いよく走った後で不調が出た場合は、雨の話ではなく「水を吸った」可能性を先に疑ってください。症状の見分け方は次の記事にまとめています。

エンジンが水を吸った時の症状|冠水路のあと絶対にやってはいけない一手関連記事エンジンが水を吸った時の症状|冠水路のあと絶対にやってはいけない一手冠水路のあとエンジンが止まった・調子が悪い時の症状の見分け方と、被害を数万円で止めるためにやってはいけない一手を、公的機関の資料を引きながら整理しました。

自分でできる点検と整備工場に任せる線引き

DIY初心者くん
DIY初心者くん

自分で見られるところって、どこまでですか?

タクミ
タクミ

ボンネットを開けて目で見て、落ち葉を取るまでが目安です。分解が要る所は整備工場に任せましょう。

DIY初心者くん
DIY初心者くん

開けるだけでも、気をつけることってありますか?

タクミ
タクミ

あります。エンジンを切った直後はファンが急に回ることがあるんです。安全の注意から説明しますね。

まず安全の話です。エンジンルームを点検するときは、冷却ファンが止まってから行います。エンジンが熱い状態で止めると、冷却ファンが自動で回り出すことがあるからです。部品に触る前には、エンジンと排気系を十分に冷やしてください(やけど防止)。また、点検や清掃で使った布や工具をエンジンルームに置き忘れると、故障や車両火災の原因になります。私は作業前に、持ち込んだ布と工具の数を声に出して数えるようにしています。

そのうえで、私が雨の季節に自分でやっている点検は次の 3 つです。

  1. カウル下の落ち葉・泥の除去: ボンネットを開け、フロントガラス下の隅に溜まった落ち葉を手で取り除きます。カウルの格子の上に乗った葉も一緒に取ります
  2. 排水口から水が抜けるかの確認: 雨の翌日に、カウル下の隅に水が残っていないかを見ます。いつも同じ場所に水が残るなら、詰まりを疑います
  3. エアクリーナーボックス周りの目視: 吸気ダクトやボックスの周りに、泥水の跡や落ち葉の吸い込みがないかを見ます

エンジン上面やカバーに付いた雨水の水滴は、エンジンが冷えてから乾いた布で拭く程度で十分です。私は吸水性のよいマイクロファイバークロスを使っています(マイクロファイバークロスはこちら)。カウルの下は暗くて見えにくいので、懐中電灯があると落ち葉の溜まり具合が分かりやすくなります。

逆に、次のような作業は自分でやらず整備工場に任せるのが私の線引きです。

  • 点火コイルを抜いてプラグホールの水を確認・除去する
  • ECU やセンサーのコネクタを外して端子を点検する
  • エンジン警告灯が点いた、失火の振動が続く
  • カウルの樹脂パネルを外さないと排水口まで届かない

設備保全の現場でもそうですが、「外したら元に戻せるか分からない所」には手を出さないのが一番安い選択です。

洗車・エンジンルーム洗浄の水は雨と何が違う?

DIY初心者くん
DIY初心者くん

雨が大丈夫なら、ホースでエンジンルームを洗っても平気ですよね?

タクミ
タクミ

そこが落とし穴なんです。雨は想定内でも、ホースや高圧洗浄機で上から当てる水は想定外なんですよ。

DIY初心者くん
DIY初心者くん

同じ水なのに、そんなに違うんですか。

タクミ
タクミ

違うのは水の勢いと向きです。私も一度やらかしているので、その話も含めて説明しますね。

雨は大丈夫なのに洗車の水がダメなのは、水の勢いと向きが違うからです。雨はボンネットが受け止めてから回り込む水ですが、ボンネットを開けてホースや高圧洗浄機で当てる水は、エンジンの上に直接かかります。整備業界向けの解説では、エンジンルームは雨水をある程度想定した防滴構造でも、高圧洗浄機の水圧には耐えられないとされています。自動車ジャーナリストも、ボンネットがある状態で上から水がかかることはあまり考えられておらず、電装品には基本的に水をかけないよう勧めています。

正直に書くと、私も若い頃、エンジンルームの油汚れが気になってホースで上から水をかけ、その後しばらくアイドリングがばらついたことがあります。乾くと落ち着いたので大事には至りませんでしたが、今思えば点火系に水が回っていた可能性が高いと考えています。

水洗いをするなら、ECU とヒューズボックスは事前に養生が必要です。ECU はカバーにヒビが入るとそこから水が入り、ヒューズボックスは濡れるとヒューズが錆びてショートや断線を招くおそれがあります。さらに厄介なのは、コネクタ内部に入った水です。見た目が乾いても端子の腐食が進み、数ヶ月後に誤作動として出ることがあるため、整備工場では高圧洗浄機を原則使わず、専用クリーナー・ブラシ・少量の水・すぐのエアブローで洗うそうです。洗車でコネクタ内部に水が入り、リーク電流で再始動できなくなるおそれがあったリコールもあります(二輪車)。

水をかけずにエンジンルームの油汚れを落とす方法としては、ドライアイス洗浄という選択肢もあります。ドライアイスは -78.5℃ で固体から直接気体に変わる(昇華する)ので、洗浄に水を使いません。費用や仕上がりの比較は次の記事で詳しく書いています。

エンジンルームの洗浄はドライアイスが最適?水をかけずに油汚れを落とせる理由と費用を本音で解説関連記事エンジンルームの洗浄はドライアイスが最適?水をかけずに油汚れを落とせる理由と費用を本音で解説汚れた車のエンジンルームを電装に水をかけずに洗いたい方へ。プロが使うドライアイス洗浄の原理と得意・不得意、業者施工とDIYの費用、CO2換気などの安全対策を設備保全エンジニアが正直…

ただし、ドライアイス洗浄には水とは別の危険があります。ドライアイスは 1kg で約 500L の二酸化炭素になり、二酸化炭素は空気の約 1.5 倍重く低い場所にたまります。閉め切ったガレージでは作業せず、必ず換気してください。また、騒音が 85dB(A) を超えることがあるので耳栓かイヤーマフ、凍傷を防ぐ手袋、飛び散る粒から目を守る保護メガネ、CO2 検知器の着用が推奨されています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 雨の日にボンネットを開けたら水滴が付いていました。故障しますか? A. 普段の雨や走行中の水しぶきで濡れる程度は想定内で、エンジンルームにはある程度の防水が施されています。エンジンが冷えてから乾いた布で拭けば十分です。

Q2. フロントガラスの下に水たまりができているのは異常ですか? A. 多くはカウルトップの排水口が落ち葉などで詰まっているサインです。放置すると水が車内に回り、足元の ECU を濡らすことがあるので、落ち葉を取り除いて水が抜けるか確認してください。

Q3. 雨の後にエンジンのかかりが悪いのは、乾けば直りますか? A. 湿気の多い日に多いプラグかぶりなら、かかった後は普通に回ります。かかった後も振動が続く、警告灯が点く場合はプラグホールやコネクタへの浸水も考えられるので、整備工場で点検を受けてください。

Q4. 冠水した道を走った場合も、雨と同じ考えでいいですか? A. 違います。水たまりや冠水路では吸気口から水を吸うおそれがあり、普段の雨とは別の問題です。不調があれば何度も始動を試さず、整備工場に相談してください。

まとめ

  • 普段の雨・走行中の水しぶきでエンジンルームが濡れるのは想定内。防水が足りなかった場合はリコールで直されてきた
  • 心配すべきは「溜まる水」と「入る水」。カウルトップの排水口の詰まり、吸気口とプラグホールへの浸水がポイント
  • 雨の後のかかりにくさは、水たまり・冠水路を通ったか、かかった後も震えるか、で切り分ける。湿気の多い日はプラグかぶりも多い
  • 自分でやるのは、冷えてからの目視・落ち葉除去・拭き取りまで。プラグホールやコネクタの分解、警告灯点灯は整備工場へ
  • 洗車やエンジンルーム洗浄で上から当てる水は雨とは別物。水洗いは養生必須、高圧洗浄機は使わない

雨上がりにボンネットを開けて水滴を見ても、まずは落ち着いて「溜まっていないか」「どこを走ったか」を確認してみてください。

画像: いらすとや より

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